【技術と歴史】その1 メガホン編

【技術と歴史】その1 メガホン編

こんにちは。ノボル電機、猪奥です。
これまでのコラムで弊社の紹介を3回に渡りお送りしてきました。
今回からは弊社の技術紹介及び今まで社歴の中で拡声器にまつわる歴史をお送りしていきます。
初回は、学校行事や自治会活動等で一度は目にしたり、手に取ったりしたことがあるであろう「メガホン」についてお送りします。

そもそもメガホンとは?
 メガホンは、業界によってトランジスタメガホン、トラメガ、ハンドメガホン、拡声器等々、様々な呼び名がありますが、本ブログでは『電子回路を使って声を大きくするラッパ型の手持ち拡声器』を短縮して「メガホン」と表現させていただきます。
 
 専門的な表現になりますが、
メガホン(英語:Megaphone)は、声を拡声するために用いられる道具で、音響的に指向性と声の通りやすさを向上させるものと、電子回路で増幅するものがあります。応援、演説、集会、避難誘導などに用いられることが多いです。
電子回路で増幅するメガホンの構造は、1.電源である電池、2.音声を拾いその音声を電気信号に変換するマイク、3.電気信号を大きくさせるアンプ、4.増幅させた電気信号を音声に戻して出力するスピーカーの4つが一体になったものです。
端的に表現すると、電池(電源)とマイクとアンプとスピーカーが一体になったものです。

拡声器メーカー大手のTOA様(神戸市)が世界で初めてトランジスタアンプを用いた電子メガホンを1954年に開発して以降、現在では弊社を含め日本国内に3社の製造メーカーがあり、開発を行っています。

ノボル電機のメガホンの歩み
弊社の76年の社歴の中で、いつからメガホンの製造販売を始めたのか、歴史が古すぎて定かでない部分もありますが、現在のメガホンの前に、電気メガホンとかパワーメガホンとか呼ばれたアンプのないメガホンの時代がありました。その時代のメガホンも弊社は製造しており、本社展示コーナーに NE-8 という機種が 1 台だけ展示されています。
カーボンマイクと単一電池 6 本とホーンスピーカとが直列に接続されていて、電池から流れてくる直流電流がカーボンマイクで変調されてホーンスピーカに流れ込むと増幅された声が発生されるという仕組みのものです。


【電気メガホン NE-8】

その後、トランジスタ(増幅器)を使ったメガホンを開発し、1962 年に生産開始しています。この時代の外観部品はすべてアルミ製で非常に重たいので、ハンド型ではありますが肩にかけて使えるような仕組みにもなっていました。


【トランジスタメガホンの初号機 TM-8】

樹脂化
メガホンは工場での生産時に、複雑な形状と構造により部品の組み立てが難しいという問題がありました。それを解消するため、構造上の工夫を世代ごとに加えています。同時に重いアルミ製から軽いプラスチック製への転換を行ってきました。しかし、当時は樹脂金型に投資するだけの資金力がなく、それを回収する販売数の見通しがないため。輸出向けに大量受注した機会に、部分的な金型投資を繰り返し、逐次プラスチック化を進めていきました。
財務面・販売見通し上の理由で部分的なプラスチック化を繰り返したので、製品全体としてはバランスの悪い物になってしまったとの反省から、社内からメガホン全面リニューアルの要望が高まったため、1980年から開発を始め2年の歳月を経た1982 年に満を持して TM-101 を発売しました。この商品は当時の技術者トップの渾身の作品で、デザイン的にも構造やコスト的にも、それまでのメガホンとは一線を画する製品となり、スポーツ卸や防災卸、警備、工具などの販路開拓に有効な商材となり、飛躍的にシェアを伸ばしました。
古参社員の中には、大規模なメガホンのリニューアルによる製品企画や設計開発を通して、その生みの苦しみや、発売後の顧客への浸透を実体験した方がおり、ノボル電機がメガホン市場に存在感を高めていく高揚感を体験できたと語ってくれています。


【部分的な樹脂化を行っていった歴代のメガホン】

防水へ
 その後、1995年の阪神淡路大震災時に、災害時の避難誘導用防災用品としてのメガホンの需要が高まりました。また、災害時の特殊環境下でも使えるメガホンのご要望も頂戴し、ガス爆発の原因となる火花の発生をおさえたセフティーメガホンを1998年1月に発売しました。この製品は点火源となるスイッチや電池端子等に特殊構造を採用し、火花発生の確率を低くさせ安全性を高め、さらに防まつ(IPX4/生活防水)性能を持たせました。
この生活防水の技術をベースに2000年代前半にIPX5の防水型メガホン「レイニーメガホン」を一般用として初めて開発し、消防や警備など、屋外の過酷な環境で使っていただけるプロ仕様のメガホンとしての地位を確立していきました。
その後、電池込み重量500ℊ以下という軽量性を突き詰めた「かる~いホン」を2018年に開発。各種賞を受賞する等、ご好評をいただいております。

【現行機種 かる~いホンの量産風景】
 
スマホ用無電源スピーカー「拡音器」のベースとなった拡声音響機器メーカーとしての弊社の技術・歴史の話題として、メガホンについてお届けしました。
次回は第2回目としてメガホン以外の拡声器の技術に関する話をさせて頂ければと考えております。

株式会社ノボル電機
製作所事業担当 猪奥元基