【誕生秘話】その1 商品開発編

【誕生秘話】その1 商品開発編

こんにちは。ノボル電機、猪奥です。
先日、社外の方から本プロジェクトをご質問いただく機会を頂戴しました。

私自身、酉年生まれからか、過去のことをあまり振り返らない性格でして、しどろもどろにお答えしたのですが、考えや取組を振り返る良い機会となりました。

せっかくまとめたので、本ブログで拡音器誕生秘話として、お伝えしていきます。
今回は1回目として、商品設計にまつわる裏話について誕生秘話としてお送りします。


Q、音の出る仕組みについて、三層の音道とは?
A、内部で音の通り道を2回折り返しています。もう少し詳細にお話すると、1)中心内部にあるチューブという筒状の部品が、後方から前方へ音を運び、

2)レフレクターという部品で前方から後方へ音を折り返す。

3)そして、外観部でもあるホーンを使って、また後方から前方に音を折り返し反響させていきます。

この1)~3)の順番で音が反響していきます。もともとは一本の長い筒状の音の道が、2)のレフレクターで折り返すことによって拡声器のかたちになります。
また音質も中低音に強く高音域が抑制されることによって、レコードのような風合いの音に変換されるのが拡声器本来の特徴でもあります。
目指したのは、透明感のある良い音ではなく、ノスタルジーを感じる音です。

 


Q、音作りでこだわった点は?
A、ノスタルジックな音に仕上げつつ、拡声器メーカーが作ったと言えるような音圧(音の大きさ・増幅度)の両立に苦心しました。
ノスタルジックな音は、拡声器のかたちにすることで達成できます。むしろ、拡声器の専門メーカーとして、経験を積んでいる得意分野でもあるので、狙いの音質の実現は初期に達成できました。しかしながら、音質を担保しながら、「音を大きくすることに特化した拡声器メーカー」である弊社が作ったと言えるだけの音圧を実現するのには苦労しました。

ゼロからスマートフォン用の無電源スピーカーとして設計すれば、音質と音圧の課題は解決しやすいのですが、スマホ用無電源スピーカー「拡音器」は、業務用の風合いを最大限に活かすため、外観を変えないことをプロジェクト開始当初にブランドの方針として決めました。

スマホ用無電源スピーカー「拡音器」のベースとなった業務用の拡声器(ホーンスピーカー)は、磁気回路や振動板と呼んでいるキーデバイス(電気信号を音に変換する機能)がある状態で最適化された設計をしています。
スマホ用無電源スピーカー「拡音器」は、そのキーデバイスの代わりにユーザー様のスマートフォンを音源として利用していただきますので、最適化が崩れた状態からのスタートでした。
外観を変更出来ないので、音響設計ではかなり制約がありました。その制約条件下で、如何に拡声器らしい音を作るか。。。に苦労しました。

正直なところ、変更できる部分は内部のチューブと呼んでいる部品の形状とスマホ保持部の二点のみです。幸いなことにNMP-001は設計者の経験則が活きて、エンジニアリングサンプル初回から狙った音質と音量を出せたのですが、NMP-002はコンパクトでチューブ部の音道が短いため、苦労しました。

設計者の経験則と音響設計のシミュレーションを行ってからエンジニアリングサンプルを作り、実測定を行ったのですが、シミュレーションと実際のサンプル品の実測で音圧が想定と異なり、結局、内部部品の加工寸法をミリ単位で変えた試作品を各種試作して、実験を繰り返すことで、なんとか狙った音質と音量を実現することが出来ました。

 


Q、業務用スピーカーをベースに開発したとはどの程度でしょうか?
A、基本的に外観に関わる部分はすべて踏襲しています。
弊社商品でNK-305Tという火災発生時に消火設備と連動して使用する避難誘導用スピーカーがあります。NMP-001は、このNK-305Tをベースに、AC100V駆動の音に関する部分と色やスタンプなどの意匠に関わる部分のほかは構造面では基本的にすべて踏襲させました。そのためNK-305Tとは、振動板・ドライバーユニットといった電気信号を音に変える装置と、付帯するコードやトランスといった部品を取り除き、そこにスマホ保持部をセットしているので、外観はまったく変えていません。

また、NMP-002はMS-10Kという大型船舶の甲板で使用する可搬型のスピーカーをベースに開発しました。こちらも取り付け金具の有無と、AC100V駆動という音に関する部分と色やスタンプなどの意匠に関わる部分のほかはすべて業務用のままです。取り付け金具は意匠性から採用を見送りましたが、基本はすべて踏襲しています。

一例として、NMP-001/NMP-002ともに、後方右下に穴が空いた状態です。
これらはベースとなった業務用スピーカーでは電気信号が通るコードが通る穴でしたが、スマホ用無電源スピーカー「拡音器」では、排水用の穴として残しています。

塞いでしまうことも考えたのですが、業務用であったものをわざわざ塞いで、新規に排水用の穴を開けるよりも、スマートフォンに干渉しない位置にある穴でしたので、水抜き穴として再利用しました(※拡音器の防水性はスマホ本体に依存します)。


商品開発にまつわる裏話として、ご質問への質疑形式でお届けしました。
次回は第2回目としてブランド開発に関する裏話をさせて頂ければと考えております。

株式会社ノボル電機
製作所事業担当 猪奥元基