【私たちのこと】DtoCブランドを立ち上げた理由
こんにちは。ノボル電機、猪奥です。
前々回の事業紹介、前回の工場紹介と続き、今回はなぜ、ゴリゴリの業務用メーカーであるノボル電機がDtoC事業に取り組んでいるのかをご紹介させていただきます。
私たちノボル電機は昭和20年に創業し、創業75周年を迎えた大阪府枚方市の業務用拡声音響装置メーカーです。
昭和20年にラジオ修理から始まり、ホーン型スピーカー・アンプ・マイクなど拡声音響装置の製造を行い、業務用拡声音響装置の専門メーカーとして75年の歴史を重ねてきました。
大手企業が居並ぶ電機業界の中でも、拡声器というニッチな分野に集中することで差別化を行い、これまでにない軽さを実現したメガホン「かる〜いホン」や、多言語放送装置「『外国語』しゃべ〜るホン」などを生み出してきました。
拡声音響装置の専門メーカーですが、世界企業のパナソニック様やJVCケンウッド社、拡声音響装置の専業メーカーで東証一部上場企業のTOA様など、同業他社は規模の大きな会社ばかり。同じものを作っていたのでは、資本力や開発力、営業力などすべてで見劣りする町工場が生き残ることは困難です。そこで、一般的に拡声音響装置といえば館内放送をはじめとする設備用音響がメイン市場ですが、あえてその分野には足を踏み入れず、船舶用や車載用、消火設備といった分野に特化しました。設備音響や館内放送が主戦場の拡声音響市場から見ると、大企業が手を出しにくい周辺分野で事業を展開してきました。
設備用音響の市場に参入して手広く販路を拡大するのではなく、あるひとつの業界のニーズを狭く深く探っていくことで、細かな部分に対応した商品を提供し、企業理念でもある「安心される専門メーカー」を具現化してきました。
具体例では、一隻ごとに仕様の異なる大型船に合わせたスピーカーを生産し、いかなる船舶にも柔軟に対応できます。また、清掃車が音を鳴らしてゴミ回収しに来たことを知らせるオルゴール音は、弊社が企画・開発したものです。車載用拡声器についても、マーケットの大きな選挙用には手を出さず、移動販売車や広報車などの小型拡声器に特化してきました。
設計手法も、大手企業のように、企画を練り上げ試作を重ねる手法とは少し異なり、スピード感をもって取り組んでいます。企画から設計・開発を経てすぐに試作へと移行する今でいうリーンスタートアップ開発の手法を取りいれ、お客様に実際にお使いいただくことでさまざまなご意見を頂戴する。そこから、さらにブラッシュアップしていく。こうすることで隠れたニーズを製品に落とし込め、既存製品とは違う“とがった部分”を持った製品が生み出せてきたと自負しております。
弊社の基本は、国内市場に根を張って運営していくことです。海外市場に目をむけるのではなく、モノが飽和した国内市場で何ができるのか? 次なる成長を求め、ノボル電機の試行錯誤が始まりました。
弊社が行っている基本戦略は、拡声器という単一商品を、他分野に展開していく「市場開拓戦略」です。それを愚直に75年間行ってきました。国内市場に根を張りながら、市場開拓という基本戦略を守り、時代に合わせて変化すべきところを革新していくために『同じことばかりに目を向けていても成長できない』との考えに至りました。
単一商品(拡声器)の水平展開という基本戦略を踏襲しながら、今までは業務用の枠内で販路開拓に留まっていた市場の範囲を、「業務用の枠組み」を自社で科した足かせと考えると、それを取り払うことにより一般消費者向けといった新たな販路が見えてきました。
一般消費者向けでも、商品に共感をして下さった方々の意見をもとにブランドコミュニティを形成するという、これまで培ってきた技術や経験を活かすることができ、お客様に「いままでにない価値の提供」ができると考え新ブランドの立ち上げを始めました。
新ブランドのコンセプトも当初から決まっていたわけではありません。
町工場が自社単独の努力でできることも限られているため、大阪府の支援事業でもあるBtoC化伴走型支援事業の【大阪商品計画】へ応募し、採択され支援を頂けたことで、プランディングプロデューサーである株式会社Camp様の助言を頂き、弊社らしさとは何なのかを考える日々が始まりました。
株式会社Camp様の支援をいただきながら、社内でコンセプトワークを行い、それを踏まえた個別面談を重ねることで、出てきたキーワードが“懐かしさ”や“癒やし”でした。
75年の歴史の中で生まれた、どこか懐かしさを感じる商品デザインをベースに、「音に寄り添った商品」という切り口で、お客様が≪ほっとひと息つける≫新たな価値を提供する、そんなブランドを目指して、「不器用なガジェット」というブランドコンセプトにたどり着き、『ノボル電機製作所』が生まれました。
まだまだ、生まれたばかりのブランドで、商品も拡声器にフォーカスしたスマホ用無電源スピーカー『拡音器』のみですが、今後はこれまで培ってきた「音を遠くに届ける」こととは少し距離をとり、もっと音自体に目を向けた商品を開発していきたいと考えています。
株式会社ノボル電機
製作所事業担当 猪奥元基