【技術と歴史】その5 スピーカー編

【技術と歴史】その5 スピーカー編

こんにちは。ノボル電機、猪奥です。
当社の技術と歴史として、過去4回、「メガホン編」、「車載用アンプ編」、「設置型アンプ編」、「汽笛編」とアップしていますので、こちらも併せてご高覧いただければ幸いです。

今回は、技術と歴史シリーズの最終回として、当社の祖業でもあるホーンスピーカーについてお話していきます。

 

創業前夜から立ち上げ期

当社は1945年10月に大阪市東成区で、創業者 猪奥要が友人と二人で、ノボル電機製作所として個人創業しました。当時、創業者は大阪城に在った中部軍司令部で通信兵をしていました。敗戦で日本軍は解体され兵は復員(帰宅)することになりましたが、なぜか上官に残務整理の手伝いを命じられ復員が遅れ、10月に創業となりました。
大阪の日本橋には旧日本軍や米軍の通信機のジャンクが多数売られていて、その中から使える部品を集めてラジオの修理から事業を始めました。当社がスピーカーを作り始めた経緯は分かりません。創業者も創業当時のことをあまり詳細に語っておらず、スピーカー製造開始は創業から数年後だと想像しています。ホーンスピーカーの製造を始めたきっかけは、創業当時の修理を行う中で外国製のホーンスピーカーを見て興味を持ったのが始まりだったようです。鍛造や、鋳造、へら押しなどの金属加工業、トランス製造業、塗装業、ゴム加工業なども身近にありました。大阪城の東側は工業集積地で、ホーンスピーカーの部品業者が身近におり、協力していただけたことが大きな契機になったと推測しています。また、統一地方選挙が1947年4月に行われ、その後4年ごとに実施されています。現在選挙用は撤退していますが、創業当時は魅力的な市場と見えたことと思われます。

 

車載用スピーカーから設置用スピーカーへ

「車載用アンプ編」「設置型アンプ編」でもお話させていただきましたが、当社は車載用の拡声器メーカーとして歩を進め、成功と失敗を繰り返しながら、設置型に参入していきました。
アンプに関しても、車載用と設置型では内部構造が異なるのですが、ホーンスピーカーに関しても、トランス(変圧器)なしのローインピーダンスという方式が車載用で、トランス付きハイインピーダンスが設置型と技術的な仕様が異なります。
1980年代までは、設置用アンプや、設置型で使われるトランス付きスピーカの販売が弱く、一部特殊用途でご採用いただいていたにとどまっていました。
1981年にNP-10M、1997年には防水性を改良したNP-210を発売して安定供給ができるようになりました。また、ボックススピーカは1984年末にBS-313とBS-314を発売しています。「設置型アンプ編」でご紹介した、電話呼び出し放送専用アンプで販売量を確保できたことが、スピーカーの部品調達や製造工程の平準化にもつながりました。
また、1984年初めにはアンプ内蔵の業務用アクティブスピーカー(通称コールスピーカ)を発売して、電話着信音の拡声やスピーカー1個だけの簡易放送ができるようになり、電話呼び出し放送専用アンプのラインナップとして、社業の向上に大いに寄与しました。
拡声放送装置メーカーというからには、設置用のアンプとハイインピーダンススピーカを持ち、自社品で放送設備を組めるようにしました。また自社品を愛用してくださる工事店様と多くお付き合いしたいとの願いが、電話呼び出し放送専用アンプの成功で実現できました。

 

75年間 変わらぬホーンスピーカーの原理

当社が製造しているレフレックス型ホーンスピーカーは創業当時から動作原理が一つも変わっていない、超絶ロングテール商品です。
ドライバーユニットと呼ばれる音声を発信する部品は、磁石に銅線(コイル)で電気信号を流し、振動板を振幅運動させて空気を動かす仕組みです。
これは理科で習われた方が多いと思いますが、フレミングの左手の法則の電気と磁力で力を生む法則そのままです。
ドライバーユニットで発生させた音声を、チューブ部・レフレックス部・ホーン部と呼んでいる3層の折り返し構造により、音を反響させることで、声を拡大していきます。
これが拡声器の原理です。

【ホーンスピーカーをカットした見本品】

 

差別化の歴史

アルミのヘラ絞りから、樹脂(プラスチック)成形品へ。「メガホン編」でも触れましたが、当社のホーンスピーカーの歴史は、樹脂化の歴史でもありました。また、お客様の用途に合わせて、大手が手を出せないちょっとした違いを見つけ出し、仕様化してお届けする差別化の歴史でもありました。
ホーンスピーカーの形や原理は75年間、変わっていません。
皆様から見たらまったく同じ形のホーンスピーカーですが、トンネル用、消火設備の避難誘導用、防災行政無線の大出力用、清掃車用、広報車用、電話呼出放送用etcと各製品には主たる用途があり、すこしずつ仕様が異なります。現在では、スピーカーだけでも50種類以上の品番があり、各製品でお客様の用途が異なっています。
大手の大量生産のコストメリットには太刀打ちができませんが、差別化された特長商品をご提供することで、75年の歴史を刻んできました。

スマホ用無電源スピーカー「拡音器」のベースとなった拡声音響機器メーカーとして当社の技術・歴史の話題として、全5回に渡りお届けしました。
次回からは、外部の方にスマホ用無電源スピーカー「拡音器」について、ご質問いただく機会を頂戴しましたので、本ブログで拡音器誕生秘話として、お伝えしていきたいと考えています。

株式会社ノボル電機
製作所事業担当 猪奥元基