【誕生秘話】その3 プロダクトデザイン編

【誕生秘話】その3 プロダクトデザイン編

こんにちは。ノボル電機、猪奥です。

先週・先々週に引き続き、社外の方から本プロジェクトをご質問いただく機会を頂戴したのを好機に、考えや取組を振り返る機会として、本ブログで拡音器誕生秘話として、お伝えしていきます。
3回に分けてお送りしている誕生秘話最終回は、拡音器というプロダクトが生まれた背景、特にプロダクトデザインについて誕生秘話としてお送りします。


Q、商品化で一番苦労した点は?
A、「拡声器」から「不器用なガジェット」へ変換するためのデザインです。
商品設計では、ノスタルジックな音に仕上げつつ、拡声器メーカーが作ったと言えるような音圧(音の大きさ・増幅度)の両立に苦労はありましたが、一番は?と問われるとブランドコンセプトにそったデザインを追求し、「不器用なガジェット」へどう変換するのかに苦労しました。

スマホ用無電源スピーカー拡音器は、業務用拡声器をベースに開発しているので、私たちからすると75年作り続けている『見慣れた工業製品』です。自分達の常識をいったんリセットして、「拡声器」から「不器用なガジェット」へ変換しなければなりません。

といっても、本商品は業務用をベースに製造していますので、外観が変更出来ないという制約があります。外観を変えることなく、商品化できるデザインが求められました。

業務用の専門メーカーとして、堅牢性や実用性を追い求めていた会社ですので、デザインのことはわかりません。そこで、紹介をしていただいたデザイナーの橋本太郎さんに商品デザインを依頼したのですが、町工場とデザイナーという、ある種の異業種ですので、使う言葉や単語が異なります。自分達の想いをどう表現したら伝わるのか?また、デザイナー様が伝えてくれた言葉の真意は?に日々悩みました。

これらは、総合プロデュースをお願いしている株式会社Camp様との打ち合わせを重ねることにより、共通の言語を獲得し、デザイナー様と弊社の間にたった翻訳者としてご尽力頂くことで、制約が厳しい中、デザイン性をご評価して頂けるプロダクトに仕上げることが出来ました。

共通の言語を獲得したことで、スマホ用無電源スピーカーとしての機能面に影響を与えない部分でのデザインをお願いでき、商品前面のアルミ板へのデザイン・背面部のロゴをスタンプにする提案、個装箱に貼付している封緘シール等々、細部にわたってブランドコンセプトに沿った意匠性を提案いただけました。
町工場として出来ることを伝え、ブランドの世界観を伝え、制約が厳しい中で提案いただけたデザインはどれもよいもので、複数の案から絞り込むのに苦心しました。

ブランドロゴも橋本さんにデザインをお願いし、当社の主力製品でもあるホーンスピーカーをデザインに組み込んだノボル電機製作所らしいロゴを作っていただきました。
弊社にとってデザインは苦手な分野でしたが、デザイナー様や、プロデューサー様、社内での協議を重ねることで問題を解決することができました。


Q、音作りやデザイン以外で苦労した点はありますか?
A、ユーザー様にご購入いただけるようコストを如何に圧縮するかにも苦労しました。
金属製のホーンスピーカーですので、材料費が高く、また量産品とはいえ工業製品として流通させるには、量産化のメリット(同一製品の組立による習熟効果や部品の大量購入と大量生産によるコストダウン効果)を享受できるような数が見込める商品ではありません。

この点は、商品企画のスタートで決めた「拡声器の風合いを最大限に活かす」ことの副次的な効果として、金型や生産設備などを既存事業と共有化することで初期投資を抑えることができました。

通常、メーカーが新製品を作る際には、その商品のかたちを作る金型を起こします。金型というと製造業に携わっている方でないと馴染は薄いと思いますが、数百万円の投資が必要な設備ですので、町工場が簡単に新規投資に踏み切れるものでもありません。拡音器の材料費は本物を使うことで高額になりましたが、初期投資を圧縮することで、最終的にはユーザー様にご購入いただける価格帯となりました。


Q、ターゲットとした購入層は?
A、20代後半~40代前半を想定し、ブランディング・商品開発を行いました。
そのため、メインターゲットにリーチするようグリーンファンディング様でクラウドファンディングを行いました。結果は、狙い通りの層に届いたと思っています。

半面、郷愁・ノスタルジーを感じていただける40代後半以降の方からの問い合わせも多く、その年代の需要もあるはずですが、そこにリーチできていないことに課題を感じております。課題解決に向けて、プレスリリースや販促展開を行い、需要層への訴求活動を進めています。


3回に渡り拡音器誕生秘話として、某全国紙の新聞記者様に取材を頂いた経験をもとに、取材後にもっと上手く答えられたのにという反省から若干の加筆を行い、質問への回答という質疑形式でお届けしました。紙面では文字数が限られているため、核となる部分を記事化していただいておりますが、前後関係含めてブログに書かせていただきました。


週1回投稿を目標にブログを始めたばかりですが、用意していたネタが既に尽きてしまい、来週からは自転車操業の開始です。

株式会社ノボル電機
製作所事業担当 猪奥元基